ストーカー規制法改正、1月3日施行の概要を解説。SNS対象、罰則強化など・・・

ストーカー規制法改正、1月3日施行の概要を解説。SNS対象、罰則強化など・・・

昨年の12月6日(金)に衆議院本会議で可決、成立し、2017年1月3日(火)から施行された『ストーカー規制法 改正』。SNSを対象とするなどこれまで以上にストーカー行為とされる範囲を広げ、罰則が強化されます。今回改正された概要を細かく解説してみたいと思います。

ストーカー規制法 2017年1月改正の概要

今回施行されたストーカー規制法の改正の概要は主に以下の通りです。

・TwitterやLINE等のSNS等でのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込みを、つきまとい行為に追加
・罰則の強化
・非親告罪化
・緊急の場合、事前の警告や聴聞等を経ず、また被害者の申し出が無くとも公安委員会による禁止命令を可能とする(今回は未施行)
・禁止命令の有効期間の明文化(原則1年、延長可能)
・情を知って、ストーカー行為等をするおそれがある者に対し、行為対象となる相手方の個人情報等を提供する行為の禁止
・警察、司法関係者への被害者の安全確保、秘密保持義務の明記
・国や自治体に、被害者に対し民間滞在(民泊等)の支援、公的賃貸住宅への入居に関する支援に務めさせる

以上の8項目になっています。では1つ1つ解説してみたいと思います。

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目玉はTwitter、LINEなどのSNSがストーカー行為の規制範囲に

【TwitterやLINE等のSNS等でのメッセージの連続送信や、個人のブログへの執拗な書き込みを、つきまとい行為に追加】
東京都小金井市で発生した女子大生ストーカー刺傷事件がきっかけとなり、法改正されました。この事件は、2016年5月21日に東京都小金井市で芸能活動を行ってた当時20歳の大学生、冨田真由さんを岩埼友宏容疑者(27)がTwitterなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスの建物でナイフで焼く30箇所を刺した事件です。
この事件の問題点として、TwitterやLINEなどのSNSは取締対象に入っておらず、事実上野放しになっている状態でした。一部自治体の迷惑防止条例ではSNSでの嫌がらせは違法とされていましたが、東京都は未制定になっていました。
この事件後、専門家やマスメディアが規制対象になっていないことを一斉に非難し、署名活動なども開始されたため法改正が施行されたのでした。

【罰則の強化】
(改正前)「ストーカー行為」をした者は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金。ただし、親告罪(※1)扱い。
(改正後)「ストーカー行為」をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金。

(改正前)禁止命令に違反して「ストーカー行為」をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金。
(改正後)禁止命令に違反して「ストーカー行為」をした者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金。

(改正前)禁止命令のその他の事項に違反した者は、50万円以下の罰金。
(改正後)禁止命令のその他の事項に違反した者は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。

※1 親告罪(しんこくざい)とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪をいう。 告訴を欠く公訴は、訴訟条件を欠くものとして判決で公訴棄却となる。

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【非親告罪化】
上記の通り、改正前は禁止命令前のストーカー行為は親告罪扱いでしたが、改正後は全て非親告罪となり、告訴がなくても犯罪扱いになりました。

【緊急の場合、事前の警告や聴聞等を経ず、また被害者の申し出が無くとも公安委員会による禁止命令を可能とする(今回は未施行)】
警察以外に公安委員会が禁止命令を出すことができるようになるよう改正されますが、1月3日時点では未施行です。現在は行政手続法の規定により意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければいけません。つまり現在は、加害者側の意見を一度聞いてからでないと禁止命令を出すことができない状態になっています。
これをストーカー行為の犯罪性が高いと判断した場合は、聴聞を行わずいきなり禁止命令を出すことができるようにするというものです。

ただ、今回未施行な理由もあり、被害者側が嘘をついて相手をストーカー扱いさせようとし、公安委員会が「騙されて」禁止命令を発行してしまう可能性があるからです。
例えば、ある女性が元カレに何十万もお金を借りたまま別れたとします。元カレが貸したお金を返してもらいたいので、別れた後も連絡を取ろうとしたとします。無視しているうちに元カレから「何無視してんるんだよ!」「家まで行くぞ!」などとLINEで送られてきたとします。ここだけを切り取って、この女性が通報したら元カレはストーカー扱いをされ、即禁止命令が出てしまう可能性があるのです。元カレは女性に興味はなく、貸したお金を返してもらいたいだけなのにストーカーとされるケースが出ることが考えられるためです。

【禁止命令の有効期間の明文化(原則1年、延長可能)】
こちらはこれまで明文化されていなかったので、きちんと明文化するようにしたということです。

【情を知って、ストーカー行為等をするおそれがある者に対し、行為対象となる相手方の個人情報等を提供する行為の禁止】
これは第三者に対するストーカー規制法を対象にするということになります。例えば自分の友人の男性がストーカー行為をする目的とは知らなかったとして、元交際相手の連絡先や住所などを勝手に教える行為などを指します。同罪とは言わないまでも間接的に犯罪を手助けしてしまっていることになるからです。

【警察、司法関係者への被害者の安全確保、秘密保持義務の明記】
これはこれまで大きなストーカー事件では、警察の落ち度が多く報道されているのを受けて改正されたのだと思われます。

【国や自治体に、被害者に対し民間滞在(民泊等)の支援、公的賃貸住宅への入居に関する支援に務めさせる】
現在、被害者に対する自治体の対応はまちまちなのが現状です。熱心に対応してくれるところもあれば、対応が遅いところもあります。このような状態をレベルの高いところで均一化する目的から改正されました。

まとめ

前回、2013年6月26日の改正から役3年半ぶりに改正された「ストーカー規制法」。年々増加しているストーカーの被害届。ここ数年は毎年2万件を超えているそうです。さらに凶悪な事件に発展するケースも増えており、今回の法改正は言われている通り、対応が遅いとも言えます。
法律を厳しくすることで、件数はさらに増えることが考えられますが、女性が一人でも安心して生活するためには必要な改正であったと思います。

以上、「ストーカー規制法改正、1月3日施行の概要を解説。SNS対象、罰則強化など・・・」でした。